ユーラシアパンクめぐり#7 ベトナムへ

カアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!

ペッ!!!!!!!!

 

 

中国ではニワトリの代わりに素敵なおじさんの鳴き声で一日がはじまります。

頭がおかしくなりそうです。

 

 

さて、中国最南端の街、ここ河口(ハーカウ)の街の裏の顔を紹介しよう。

中国経済の発展をアテにしてどんどんベトナム人が流れ込んできている国境の街。

 

 

そんな彼らにとって、手っ取り早い商売とはなんぞや。

そうじゃ、おぬし。

置屋(おきや)じゃ。

くもじいじゃ。

 

何の変哲もない建物の2階がそうだったりする。

 

諸君、性病には気をつけたまえ。サガミオカモトVISAカードじゃ。

 

清廉潔白な旅人である「カオル・ザ・レガシー」は、プロスティテュートには目もくれず、さっさとベトナム入りすることを決めたのである。

 

中国最後のメシは、昨日も行った飯屋で昨日と同じ『牛肉麺』(ニューロウメン)だった。

 

女主人はしわくちゃの顔に柔和な笑みで「わかってるよ」というように頷いた。

 スープを一口すすり、筋のついた牛肉を一切れつまむ。

 

口に広がる中華の香り。

 

これはたぶん八角などの調味料や、日本の物とは違う醤油によるものだろう。

ただでさえ暑いというのに、尋常ではない量の豆板醤で汗びっしょりになった。

 

「ごちそうさま、旨かったよ」と伝えると、おばさんは顔をくしゃくしゃにして笑った。

 

 

 そして、人生で初めての陸路での国境越え。

 

 

僕の泊まっていた場所からブラブラ10分ほど歩くと、もう中国側のイミグレーションである。

 ベトナム式の三角の麦藁帽をかぶった地元民たちが、大きな荷物を背負ってイミグレーションへ入っていく。出国審査は想像していたよりも実にほのぼのとしたものだった。

 係官は英語を操る才女で愛想も良く、すんなりとスタンプを捺してくれた。辺境の地ならば役人も穏やかなのだろうか。是非都会の方々に見習って欲しいものである。

 建物を出ると、幅の広い頑丈そうな橋に出た。中国とベトナムを分断する紅河にかかっている橋である。紅河といいつつも、やはり黄土色の濁流だ。

 向こう岸へと向かいテクテク歩く。

この橋は、どこに属すのか。中国を出て、ベトナムに入っていない僕は、今どこにいるんだろう。地球にいることだけは間違いない。

 さあ、初めての東南アジア、社会主義の国ベトナム!

勢い込んでパスポートを出す。係官は「オー、ジャパン!」などといって陽気に見えるが、職務はしっかりとこなす。

目的は? 観光です。

ホテルは? ハノイで探します。

最後にビザなしなら15日以内だぞ、とまじめな顔でスタンプを押した。

 

 グッモーニン、ベトナム!!

 

建物を出たとたん、人々が声をかけてくる。

バイクに乗せてってやるぞ、どこまで行くんだ、など。

中国ではあまりこういうことはなかったので、僕はちょっと人気者になった気がした。

「マイバイク、ジャパン! ホンダ!」だって。かわいいヤツらめ。

人に注目されるのも良いものだ。

 ……もちろん、この国を出るころにはそんな思いは露と消えていたのだが。

 今度はおばちゃんたちに取り囲まれた。手には電卓。「エクスチェンジ!」

市街のATMを頼りにして、ここでの両替は余った中国元だけにとどめた。10元が3万4000ドン。いきなりの桁数の上昇におどろくが、なんのことはない、1万ドン札3枚と2000ドン札2枚。1食分にちょっと満たないくらいの価値だ。

 その金でバイクタクシーに乗り、一気に鉄道駅へ。バイクの後ろに乗るなんて日本では普段あまりないことだ。ビビりすぎかというくらいしっかりつかまり、風を切って進む!

 車道から見て気づいたことは、中国と比べて、商店の数が少ないことだった。そして、ついに、漢字の看板はまったくなくなった!

変わりに上下に色々飾りのついたローマ字が堂々と光る。

 そして昼間からビーチパラソルの影でビールを飲むオヤジたち。

ああ、僕はやっと中国の熱量から開放されたのだ。

 ものの10分でラオカイ駅に着いた。この付近はわりと栄えているようで、縦長で薄緑や黄色のカラフルな建物が並んでいる。

 こぢんまりした駅舎の上部には「GA LAO CAI」の赤い浮き文字。

 

 

BY Kuntaku Trần

 

「GA」というのが駅という意味だろう。

 さっそく切符売り場に向かうが、いくつかある窓口には全てシャッターが降ろされている。不安になってオロオロしていると、背の低い白髪のじいさんが近づいてきた。どこまでいくのか、と聞かれて「ハノイまで」と答える。

「なんでここ閉まってるの? どうやって切符買えばいいのかな」

「ノープロブレム。ハノイだな。30万ドンだ」

 30万ドンといえば、日本円にして約1500円である。

 そこらへんの地元民と変わらない服装のじいさんは、腰のポーチから切符を出すと、僕の前に掲げた。

「え、あんた駅員なの?」

「そうだ。さあ、ハノイまで行くんだろ?」

 チラチラと切符を揺らすじいさん。

 さすがの能天気な僕も、絶対にボッタクリだと感じて「やっぱいいや」といって去ろうとするが、じいさんはなおもしつこくつきまとってくる。でも脱兎と化した僕に隙はなかった。

 1時間ほど街をブラブラして戻ってくると、窓口はしっかり業務を再開していた。時刻は午後2時すぎ。どうやら昼休みだったらしい。

 中のオバサンに行き先を告げると、寝台か、クーラーつきの座席か選べといわれた。もちろん座席を選ぶ。

「23万ドンです」

 ……やはり、さっきのじいさんはダフ屋だった。

 電車はぐんぐん進む。牧歌的な風景ばかりが後方に流れて消える。

 僕の隣には 、上品そうなサラリーマン。英語も聞き取りやすい。きっといい教育を受けたのだろう。

 彼は僕にやさしく忠告してくれた。

「ベトナム人は悪いやつもいっぱいいるから、急に声をかけられたら警戒しなきゃダメだよ」

 特に大都市のハノイやホーチミンはハゲタカのようなやつらが多いという。

「そうなんですね。だけどまあ、こんなにみすぼらしい格好をしてるから大丈夫じゃないですかねえ」

「いやいや、油断してはいけないよ。言葉のできない外国人にとっては生活することそのものが詐欺の対象になるんだ」

「どういうこと?」

「公然の秘密っていうようなもので、生活雑貨や食事、移動、全てにおいて外国人価格が存在するんだ」

「要値段交渉ってことですね」

 前の座席に座る、四歳になる彼の愛娘がチラチラと僕を振り返った。

「そうだぞ、気をつけろよ」とでもいっているのか。

 僕が急にニカッと笑うと、彼女も声を上げて笑った。

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