8月9日(日)Flat Sucks 10周年記念単独公演

 

 その時、客はたしか10人にも満たなかったはずだ。

はじめてFlat Sucks がステージに立った京都祇園のライブハウス。私はせいいっぱいの「パンクファッション」をしていた。逆立てた髪、AdictsのTシャツ、鋲ジャン、Dr.マーチンのブーツ、南京錠式のネックチェーン。一曲一曲、なんとか最後までたどりつけて、それだけでうれしかった。MCで恐いくらいにスベった。

 

 やりたいことをやれ? 自分を信じろ? 愛がすべて? 暴力革命?

 

 すでにひねくれてしまっていた私はそのどれも歌う気になれなかった。だから、はじめて作った曲「Sci-Fi Liar」では、当時むさぼるように読んでいたハヤカワSF文庫について、「面白いけどこれ全部ウソじゃん。じゃあウソって面白いんだ」とか思ったことを歌詞にした。

 

 

 

 時は過ぎて、時にはあちこち旅して、10年。フルアルバムを出すことができた。アジアツアーに3回行った。PVも撮った。外国からのツアーバンドのサポートで各地を周った。谷九に住む怪人、堅田のビール狂人、バンコクのあばれおじさんたちをはじめ、いろいろな人のおかげである。

 

 充実していたのだ。バンドがなかったら決してできない体験ばかり。

 だから人生でうまくいかないとき、このバンドのことを考えて乗り越えようとした。かおり、ひろき、ひろしは優しかった。「バンドさえあればおれは何度でもやり直せるんだ……。」だがそんなとき、人に言われたことが胸に刺さって今でも忘れられない。「もうFlat Sucksはあなただけのものじゃない。勝手にFlat Sucksをダサくするな」

 

 バンドを利用して現実を見ないようにしていたのだ。のか?

 

「おれにはバンドしかない」という思いをかなぐり捨てなければならない。それは潔い決意かもしれないが、実際にはバンドは、私の、あなたのすべてではない。うまい飯を食べたいし、世界旅行をしたい。自転車を漕いで、海に沈む夕日を眺めて涙したい。恋愛にだってすぐに手を出す。だから「〇〇しかない」なんてことはないのだ。

 そうだ。Flat Sucksは生活の音楽である。生活を、人を、食をないがしろにしていては決してできない音楽だ。周りのみんな、世界中のみんながそれをわからせてくれた。

 ないがしろにしていいのはただ一つ、賃労働だ。あれだけはいかん。

 

8月9日。Flat Sucks10周年記念単独公演。

そろそろひねくれられなくなってきたか? いやおれはまだだ。

 

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8月9日(日)京都西院ネガポジ(〒615-0002 右京区西院東今田町40)
午後7時開場/午後8時開演。予約者のみ。
予約受付中。店またはバンドまで連絡してください。
ネガポジ :075-555-5205 info@negaposi.net
Flat Sucks:flatsucks@gmail.com
マスク・消毒液完備。 
配信でもライブの模様が見れます↓ 自分の決めた値段を払うことができます。
https://youtu.be/9hyYQzeX2_w

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