Live in Malaysia 2019 ①
Flat Sucks
マレーシアライブ 2019 春
ツアーレポート①
4月26日「出発」
つい先日引っ越したばかりのアパートの一室は、まるで花もはじらう女子大生が憂いのため息をはくのにおあつらえ向きの真っ白な壁に囲まれている。ヘビー畳ユーザーだった私に、これまた真っ白なフローリングがその存在を主張し、新しい生活および新しい性格を私に課そうとする。少しは乙女でありたいものだ。
いまだ積まれた段ボールから、パスポート、着替え、タオル、バンドの物販、変圧器、さらにあまっていたマレーシアの通貨「リンギット」など、あれこれ旅の荷物をひっぱり出す。
関空発クアラルンプール行は午後10時出発。夕方ようやく家を出て京阪電車に乗る。帰宅ラッシュに巻きこまれてなかなか座れない。
ことのはじまりは……、……いつだろう。まあいい。わかりやすいところから。
かつて私は世界をブラつき、各地でパンクを見てまわった(知る人ぞ知る名著:ユーラシアパンクめぐり参照)。日本のライブハウスだとどこか身構えてしまいいつもそこそこの雑談しかできない私だが(・あのバンド知ってる? ・あー、名前だけはきいたことありますね ・たぶん好きやと思うで ・あ、あざっす)、現地では言葉の不自由さ、誰もおれを知らない!という圧倒的な解放感などによるものか、または日本に比べてライブハウスに集まる年齢層が格段に低いためか、各地でこれでもかというくらいに濃い時間を過ごしたものだ。私も若くてバカだった。
その過程でFlat Sucks(愛すべき私のパンクバンド)のデモCDRを配り歩いた。それが功を奏し、様々な縁が生まれた。私たちは今までにタイ、マレーシア、ラオス、シンガポールでライブをする機会に恵まれた。
今回はなんと3回目のマレーシアツアー。それも、2回目(2017年)のツアーのときに共演したバンド、Perek Kasi Gerek (以下、PKG)というバンドが私たちとぜひまたやりたい、ということで呼んでくれたのだった。
呼んでくれたのだが、日にちが近づいてライブの詳細などをたずねてもPKGのドラムであるワン・キリン君は「Ok, わかった。それでいこう」みたいなノリでなにひとつ確かなものがないまま。人生かよ。英語をちゃんと理解しているかどうかも怪しい。”How about”が”Haw obaut”とかになっている。ううむ。
どうやら私たちはおよそ3箇所くらいでライブできる可能性があるかもしれないらしいはずだという。まあ、行けば何とかなるだろう。
ライブの日程は一応5月1、2、3日で行うことになっていた。ドラムよこやまひろきとギターきたはらひろしは労働に忙しく、当日に到着する予定。そういうわけで労働を悪徳ととらえてやまない私とベースつついかおりは3、4日ほど早く日本を脱出することにしたのである。
関空でかおりに会った。ベースのハードケースさえなければ、GWのバカンスに赴くハイソなガールといった服装。もうサンダル履いてやがる。
「なんかもうアジアなんだけど」
「関空って日本じゃないよね」
みたいな知能低めの会話を交わし、しかしフライトまで時間がないのでメシも食わずにチェックイン、すぐに出国審査へ。
かおる&かおり
あたりはすでにGW日本脱出客であふれかえっている。
私の目にチラチラ入る「地球の歩き方」。ガイドブックなんて持ってたら書いてある通りにしか動けないゼ? などと説き伏せてまわりたいくらいに多感な貧乏旅行者だった私も、今では……、今ではなんだろう。他人にあんまり関心がなくなりました。うぺぺ。
関空のキレイな床&かおり足
機内に乗り込んでエアアジアのぴっちりした赤い制服に身をつつむ客室乗務員のぴっちりした部分を見たり、ぴっちりしていない部分を見たりしていると、アナウンスが入った。「あんまりおめーらゴールデンウィーカーどもが荷物積み込むもんだからちょっとヒコーキ不調だわ。30分待っとけ」
結局1時間後に出発した。さらば日本。おやすみ。