ユーラシアパンクめぐり#38 さらばおっさん、いざルーマニアへ
8月19日。
ローマンと行動するのも今日で数えて5日目になる。ツーリストインフォメーションのボスらしいから、時間は自分で作れるんだと。親切だよなあ。
最寄りのゴルナ駅まで一緒にバスに乗って案内してくれた。駅の売店でチャイとアイスクリームを摂取。まだトルコ文化圏だからティーじゃなくてチャイって言うんだね。
車窓からは、そびえる断崖とそのてっぺんにちょこんとした教会が見える。現世から離れて下々の者を見下してやがるのか。うらやましい。メタルにかまけてる場合じゃなく、行っとけばよかった!
(ヴェリコ・タルノヴォの街並み↓)
そして今夜のルーマニア行き国際列車の切符をゲット。
いよいよ愛と薔薇の国、ブルガリアともおさらば。
その後街までもどり、ホステル近くの食堂でナス+チーズ+ヨーグルトの料理を食べる。うまー。
別れを惜しむおっさんと若者は心行くまで公園で語り合った。おっさんいわく、
「あれは私が7歳の時だった。今でも鮮明に覚えてるんだけど、夢の中で日本にいたんだ。夢から覚めてそう判断したんじゃない。だってたった7歳だよ。不思議なことに、夢の中で『ここが日本なんだ』とわかっていたんだ。そして大人になった後、日本の白黒映画を見たときに、ああ、あれはやっぱり日本だったんだって確信したよ」
なんだか純粋なおっさんだ。かわいい。ローマン、君の優しさは忘れないよ。
最後に彼の住所とメールアドレスを教えてもらった。帰国したらなんか送ったろ。親日家だし。
そして出発の時間が来た。ルーマニアのブカレスト行きの夜行列車に乗り込む。車両内は、両側にコンパートメントがずらりと並ぶ個室式だ。幸い僕のところには誰も乗ってこなかったので、月明かりの下でふんぞり返る。
浅川マキや吉田拓郎なんかを電車の振動と混ぜ合わせるように歌っていたら涙が出そうになった。
深夜に電車が止まり、まずブルガリア側の係官、次にルーマニアの係官が入ってきた。いちいち車内から出なくて良い、素晴らしい出国&入国。
ルーマニア。どんな国だろう。
ひろき(※Flat Sucksドラマー、2013年に一ヶ月間ルーマニアのシビウで演劇際の裏方仕事をこなした)の話によると、とても素晴らしい国で、人懐っこい美人にすぐ恋しちゃうらしい。もう恋なんて……。
(ブカレスト・ノルド駅)
https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Gara_de_Nord_3.jpg#mw-jump-to-license
列車は少し遅れて朝の6:30に到着した。
駅舎は新しく、思ったよりは治安も良さそう。出会う旅行者たちに話を聞くと、かなりの割合で「ジプシーが多いから気を付けろ」との助言をもらったが、街中に出てみてもまあ大丈夫そう。
徒歩で目当ての宿、ファンキーチキンゲストハウスにチェックイン。ここは近所のおっさんおばさんたちが集まり、みんなで屋外にテーブルを広げて宴会を繰り広げるという、やはり俺はこういうところに行きつくんだろうなと思わせる宿だった。
そのおっさんたちから僕は学んだ。女性器はルーマニア語で「ピズダ」ということを。
ブカレスト市内にまだ残る共産主義の匂いをかぎながら、美術館や映画館などに足しげく通う日々。
実は、8月最後の締めくくりとして、ルーマニアのルシュノフで3日間ぶっ通しの大メタルフェスがある、という情報をキャッチしていた。これは行くしかない。
しかし、それまであと一週間以上ある。足踏みするのは性に合わない。特にヴェリコ・タルノヴォではだいぶまどろみのんびりしていたから。
というわけで、だーーーーれも知らない国、モルドバへ行こうと決めたのであった。